【DR紹介記事】ドラゴンラージャのすすめ
#ドラゴンラージャ電子版復活ありがとう Advent Calendar 2023 企画の5日目に参加しています。企画の 朝からポテチ様 ありがとうございます!
『涙を呑む鳥』《バード・ザット・ドリンクス・ティアーズ》日本版ヒット祈念 ドラゴンラージャ未読者向けのプレゼン
ドラゴンラージャのファンのみなさんも、まだファンじゃないみなさんも、ごきげんよう。初めまして、それともお久しぶりです、でしょうか?
来年2024年は、ついに十数年ぶり、作者イ・ヨンドの長編小説『눈물을 마시는 새(涙を呑む鳥)』が日本で翻訳刊行される記念すべき年になりそうですね!
⇒※2023/12/27追記
2024年中に、イ・ヨンド《バード・ザット・ドリンクス・ティアーズ》シリーズとして、ハヤカワ文庫FTより順次刊行予定との告知あり!
(※ソース:本の雑誌編集部『おすすめ文庫王国2024』(2023/12/6刊行)のハヤカワ文庫新刊予告より)
イ・ヨンド先生の十年ぶりの翻訳新刊をよろしくお願いします!!!!!!! 本当にお待ちしておりました!!!! ありがとうございます!!!! これで日本でもみんなに勧められる。飛び上がるぐらいうれしいです。うれしすぎてこのニュース見た直後に電柱にあやうくキスしかけました。人生で最高の瞬間かもしれない。
ちなみにこの告知についてX(旧Twitter)で大騒ぎしてたら、イ・ヨンドとほぼ専属で契約してる韓国の出版社の編集長に見つかり、ハヤカワでの『눈물을 마시는 새(通称:눈마새)』シリーズ日本語版刊行が、私のツイートを引用RTする形で公式に発表されました。その編集部公式告知ツイートは数千RTされ、韓国国内のファンの人たちの間で日本版出版のニュースが注目されているのがわかります。それにしても通知見たとき気が遠くなりましたね。原書の編集者と翻訳版の編集者(たぶん)にアカウントがバレた
엇. 엠바고였는데 발표되었군요. 공유 감사합니다. 일본 하야카와에서 <눈물을 마시는 새> 전권이 출간될 예정입니다. https://t.co/15WVzmExua
— 황금가지편집장 (@goldenboughbook) 2023年12月16日
そして、続シリーズの《血を呑む鳥(仮訳)》のほうも翻訳刊行されるよう祈っております!! みなさんぜひ買ったり友達におすすめしたりしてくださいね…DRFWの続き『影の痕跡』が翻訳されなかった悲しみをまた味わわないですむように…
イ・ヨンド『涙を呑む鳥』⇒《バード・ザット・ドリンクス・ティアーズ》、傑作長編ファンタジー小説をよろしくお願いします! 翻訳関係者の国際イベントの時点で各国話題沸騰! 十数か国での翻訳権取得、韓国文学史上最高額の版権料! 作者へのヨーロッパツアーの誘い(イ・ヨンド本人が断ったんですけど…)。本当にすごいですね! めでたい! すでにロシア版、イタリア版は1巻が刊行、ドイツ版、オランダ版1巻が来年春までに出版予定のようです。
イ・ヨンドが世界的作家になるまで秒読みですね。
ファンとしては、ようやくか、というのが正直なところ。私個人は、とっくにそれぐらい評価されてておかしくなかった作家だと思ってます。いやーしかし全世界で人気作家になってますますお金が入ってこれ以上寡作になったら困っちゃうな、先生新刊のお恵みをください。でもオタクが干からびるぎりぎりの瀬戸際で餌をくれる、そんなところも嫌いになれない。
脱線しました。
さて、そんな年の前年に、『ドラゴンラージャ』電子書籍の復活、すごくうれしいです。
なんなら『フューチャーウォーカー』も電子書籍刊行してくれていいんですよ、ええ。各プラットフォームで複数買いしますからね。
もちろんシリーズ最終作『影の痕跡』が翻訳されちゃったりしたら、うれしすぎて百冊ぐらい買うかもしれない。
私はドラゴンラージャのおかげで人生変わりました。
詐欺の広告みたいですが嘘じゃないです。
この刺さる人には徹底的に刺さるファンタジーと、子供のころに出会ってしまったせいで、私の人生は百八十度変わってしまった。
というわけで、ここから完全に新規の読者の方向け、ドラゴンラージャの簡単な紹介とおすすめをします。
来年以降、イ・ヨンドが超人気作家になった暁には、あわよくば、検索からこの紹介記事を読んで過去作ドラゴンラージャも読んでくれる人がいるといいなあ。もくろみが水の泡ににならないよう、出版社の方々、涙鳥の翻訳《バード・ザット・ドリンクス・ティアーズ》の刊行、よろしくお願いしますね!!!! お待ちしてます!!!!
#『ドラゴンラージャ』
大切な人(※父)をドラゴンの人質にされ、取り戻すために旅立つ、少年主人公の胸躍る冒険譚。
魅力的で立体的、みなそれぞれに意思があり人生があり、敵であってもどこか愛すべきキャラクターたち。
多種族多国籍で構成された色とりどりの主人公パーティー。
国家の存亡を揺るがす陰謀の数々、数百年の歴史をこえる謎と明かされる真実。
世界をかけた愛と滅び。
ファンタジー定番の旅物語、各地の個性的でリアリティのある情景描写、美味しそうな食べ物、美しい風景、そこで出会う個性的で生き生きとしたひとびと(※異種族を含む)…。
と、ド定番かつ直球のファンタジー小説。
ひと昔〜二昔ぐらい前のライトノベルやTRPGノベライズのファンタジーに触れたことのある人なら、懐かしささえ感じるかもしれません。
なぜなら、作者イ・ヨンドもその時代のTRPG小説や日本ライトノベル育ちだから…!
ちなみにメモライズをはじめ、多くの設定はダンジョンズ&ドラゴンズのオマージュであり、さらに源流に遡れば指輪物語の影響下でもあります。
つまりファンタジー好きは無条件でわくわくする単語がいっぱい。
ライトな読み口の本格ファンタジー小説が好きなら、絶対に読んだ方がいいです。
メインキャラクター紹介
パーティーに加わるメインのキャラクターだけ、ネタバレにならない程度に紹介しましょう。
主人公のフチ・ネドバルは、柔軟な思考と素直な感性、くそ度胸をあわせもった、おしゃべりで賢く、少々生意気なところのある少年。
かれは、小説の舞台となる大陸の辺境も辺境、ド田舎の村の出身であり、われわれ読者と同じく、この世界のことをほとんどなにも知らない立場から、一緒にこの未知なる世界への旅へと誘ってくれます。
基本的には、彼の成長譚、「行きて帰りし物語」というやつですね。皮肉っぽいが心優しい少年が、旅をへてどんな風に成長するのか、見届けてあげてください。
主人公と同じ村出身で、ともにドラゴンの身代金のために旅立ち、長い旅路のほとんどに同行するカール・ヘルタント、サンソン・パーシバル。
カールは、村にいたころからのフチの師であり、いつも穏やかな口調に皮肉っぽい本性を隠した、博覧強記で分野をとわない知識人。
あたかもルネサンスの「万能人」といったところ。
実は貴族の血を引いており、弓の名手でもあります。フチが非常に皮肉っぽく、かつ視野が広いのは、彼の薫陶を受けたおかげです。
サンソンは主人公フチと年の離れた幼馴染であり、気心の知れた悪友。
辺境の村の警備隊隊長をやっていただけあって、戦いには万能、戦術の素養があるため実は地理にも詳しい頼れる男。
単純な戦闘能力では作中随一かも。とてもまっすぐでいい男です。
ファンタジーには外せない、主人公パーティーの異種族メンバーには、エルフのイルリル・セレニアルとドワーフのエクセルハンド・アインデルフ。
イルリルは美しい黒髪が特徴的な長身の女性で、D&D系統のエルフらしく、二刀流と弓、魔術、精霊術を巧みに使いわけ、動物と会話することもできます。
彼女は、人間とまったく異なる視点をもったエルフという「他者」として、ときに人間の常識からは大きく外れた行動をとり、フチと折に触れてさまざまな対話をし、彼の人間的成長に大きくかかわります。
エクセルハンドは斧使いで、老練で豪快なドワーフ。
ドワーフらしく人間社会の権威などには無頓着、めんどうなしきたりにはとらわれません。どんな人物とも対等に話をします。
実はドラゴンに関する重大な使命を帯びて人間の街にやってきているのですが、初対面のときはそんなことはうかがわせず(それもドワーフらしいところ…)。
長く生きてきただけあって、人間たちにとっては伝説のような話を昔語りとして話してくれることも。
そのほかにも、女盗賊、元スパイ、元王子、聖職者、など個性豊かな面々がパーティーに加入したり、一時離脱したり。
敵対関係からパーティーに加入するのは、魔術師のアフナイデル、ナイトホーク(盗賊)のネリアと、元スパイのウンチャイ。
アフナイデルは魔術師の青年。
魔法の実力はまだまだ低く、初登場シーンはあまりに小物らしいので笑ってしまいたくなりますが、ともに旅をするうち、いかにも専門職を目指す若者らしい等身大の苦悩にさいなまれていることが、だんだんわかってきます。
本来の性格は、意外と実直で学究肌。ちょっと気弱なところもあります。
挫折をきちんと受け入れて、旅の最中に大きく成長していく姿がまぶしいです。
ネリアは、RPGにおけるいわゆるシーフ職。
赤毛のショートカットと大きなトライデントがトレードマーク、自分の仕事に誇りをもって、ナイトホークと称しています。
気性が荒い真っ黒い馬、エボニーナイトホークを乗りこなすかっこいい一面も。
主人公フチに対しては姉御肌にふるまうことが多い彼女。その奥底にある、傷ついた心が、パーティーの面々との旅で次第にほどけていく様子は、非常にリアリティがあって魅力的です。
ウンチャイは敵国ジャイファンのスパイとして登場する、鋭い目つきが印象的な男性。
スパイだけあって流暢にバイサス語を操り、剣の実力はかなりのもので、故国の技術である殺気を操るなど戦闘力は一行のなかでも高いようです。
口調はたいてい冷たく、皮肉っぽいところがありますが、実は情が深い一面も。
彼はフチの言葉に影響を受けて、故国にとらわれず、自分の人生を生きてみようと決めます。
そこからの彼の人生の劇的な転換は、この小説のテーマにも大きくかかわってきます。
キルシオンはフチたちの暮らすバイサス王国の元王子。
雄牛に乗って魔法剣をふりまわす、いかにもファンタジーのおとぎ話の主人公にいそうなキャラクターです。
破天荒すぎて王位を捨て、旅に出て冒険家をやっており、作中語られないものを含めて、多くの困難をくぐりぬけてきたよう。
経験豊かな旅人であり、一行に旅についてさまざまな助言をすることも。
彼の相棒の魔法剣・プリムブレードがくせもので、すごくおしゃべりな少女の人格が宿っており、つかを握っていないと振動で文句を言い続けたり、キルシオンの発言をしばしばおかしなふうに捻じ曲げたり、邪魔したりします。かまってちゃんでかわいい。
キルシオンは自ら野に下りながらも、元王子らしい正義感や国家への責任感をいまでも持ちつづけており、それはやがて、複数のキャラクターの行く末に大きな影響を及ぼします。
隣国イルス公国に旅した際にパーティーに加入するのは、若きプリーストのジェレイント。
常にほがらかでニコニコしており、ちょっと天然っぽいところも。
聖職者としての実力は折り紙付きで、神力でパーティーを後方から支えます。
わりとシリアスに落ち込みがちな面々の多い一行の中では、随一のムードメーカー。
楽天家なのは生来の性格もありますが、神をひたすらに信仰する聖職者だからというのも大きいよう。
いつも人生を楽しんでおり、苦悩なんかなさそうな彼からかいまみえる、聖職者としての姿勢は、彼がけっして能天気なだけではない青年であることがわかります。
旅が進むにつれ、主人公たちが住むバイサスという国家について、そしてドラゴンについて、徐々に壮大な秘密が明かされていきます。
バイサスはどういう成り立ちをもっているのか。
そもそもの始まりからドラゴンと密接にかかわっていた、バイサス王国。
隠された歴史、埋もれた愛、時をこえて交錯し相克する人々の夢、欺瞞、挫折。
―そもそも「ドラゴンラージャ」とはなんなのか?
その答えが明かされるとき、この物語は原点にたちもどり、幕を閉じるのです。
ドラゴンラージャと私
ドラゴンラージャと出会ったとき、私は小学生でした。
12巻は発刊直後に読んだので、一応リアルタイム読者といっていいと思います。
ドラゴンラージャに出会ってからかれこれ15年以上の年月がたってるのを直視すると気が遠くなりますね…。
人生のほとんどをイ・ヨンドとともに過ごしています。こわい。
当時、お小遣いをもらうたびに、お小遣い全額の千円札を握りしめて本屋に通ったのを今でも覚えています。今考えると物価が上がりましたね……。
今でも「死んでみよう」とか、「そんなくだらない本を読んで」とか、「本を読め、本を」とか、ウィットに富んださまざまなセリフが頭の中によぎる瞬間があります。
なにより、この本に通底しているテーマには、私自身、大きな影響を受けてきました。
人生の指針になっているといっても過言ではありません。
「われわれは単数ではない」、人間は多面的で複雑、よくも悪くも変化しつづけるのであり、他者との相互的な交流のなかで生きているのだ、という、この繰り返される言葉は、私の人間観を決定的に形作りました。
「理想をかかげられない社会変革になんの意味もない」というカールの教えはいまも私の中に息づいています。
この本がなかった人生は本当に考えられない。
まだ読んでない人には読んでほしい。子どものころに読んだ人も、大人になってから読んだ人も、折に触れて、何度でも読んでほしい本です。
それから、DR読み終わった方は続編の『フューチャーウォーカー』も読んでくださいね!! 新品は入手困難ぎみですが、図書館か古本でぜひ。
ものは腐らず、作物は実らず、子は生まれず、伝説の化け物がよみがえる。
それは、未来がおとずれず、過去が現在に追いついてしまうという世界の危機。
未来がやってこないという異変を察知した、〈フューチャーウォーカー・未来を歩く者〉、ミ・V・グラシエルは、異変の原因を探るため、草原の国、ヘゲモニアの小さな村から旅立ちます。
未来を見る巫女とその妹を主軸に、ドラゴンラージャの登場人物たちもたくさん登場する群像劇。
フューチャーウォーカーはかなり暗い話で、DRより人を選ぶ話なのは否定できないんですが、できれば読んでほしい…。そしてイ・ヨンドが地獄の三角関係が好きに違いないという私の仮説を確かめてほしい……